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インターネットで「家族葬」や「直葬」と検索すると、洗練されたデザインのウェブサイトが瞬時にいくつもヒットします。「全国対応」「追加費用一切なし」「一律〇〇万円」といった魅力的なキャッチコピーが並び、一見すると、非常に明朗会計で現代的なサービスを提供しているように見えます。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。これらのウェブサイトを運営している企業の多くは、自社で式場や霊柩車、葬祭ディレクターを抱えている「葬儀社」ではありません。全国からネットで集客を行い、地元の葬儀社に実際の現場を丸投げする「ネット仲介ブローカー(プラットフォーム企業)」なのです。
このネット仲介ブローカーの台頭により、葬儀業界には深刻な構造の歪みが生じています。そしてその歪みによる「下請けへのしわ寄せ」こそが、消費者を巻き込む高額追加請求トラブルの引き金となっています。今回は、その裏側に隠されたメカニズムを深く掘り下げます。
1. 華やかなネット集客の裏にある「中抜き」の構造
ネット仲介ブローカーのビジネスモデルは極めてシンプルです。莫大な広告費を投じて検索エンジンの最上位を独占し、「安さ」をフックに全国の遺族から注文を受けます。受注が成立すると、彼らは全国に広がる提携(下請け)葬儀社に「〇〇市で一件、〇〇万円のプランで施行をお願いします」と手配をします。
ここで問題となるのが、ブローカーが徴収する「高額な仲介手数料」です。 プランや仲介業者によって異なりますが、遺族が支払った総額の数十%、ケースによっては半分近くがブローカーの取り分(マージン)として中抜きされると言われています。
例えば、遺族がネット上で「総額30万円の家族葬プラン」を申し込んだとしましょう。仲介ブローカーがその中から手数料を差し引くと、実際に現場で汗を流し、祭壇を組み、24時間体制で遺体を搬送・安置する地元の葬儀社に支払われる金額は、わずか15万〜18万円程度になってしまうのです。
2. なぜ地元の葬儀社は「不条理な下請け」を引き受けるのか?
「そんなに条件が悪いなら、地元の葬儀社は断ればいいのではないか」と思われるかもしれません。しかし、ここには地方の葬儀社が抗えない切実な事情があります。
少子高齢化や家族の小規模化が進む中、地方都市の葬儀件数は増えているものの、一回あたりの葬儀規模は縮小の一途をたどっています。さらに、地域のつながりが薄れたことで、昔ながらの「近所のよしみで、いつもの葬儀社に頼む」という流れが完全に崩壊しました。
自社で広告を出す余力のない小さな地元葬儀社や、新しくオープンしたばかりの会館は、背に腹は代えられません。「赤字同然、あるいはトントンでもいいから、式場を空けておくよりは稼働させた方がマシだ」「仲介でもいいから件数をこなさなければ会社が潰れてしまう」という極限の心理から、ブローカーの提示する過酷な下請け条件を呑んでしまうのです。
3. 下請けしわ寄せのメカニズム:歪みが消費者に届くまで
こうして、極限まで叩かれた低予算で葬儀を請け負った地元葬儀社は、どのようにして利益(あるいはせめてものトントン)を出そうとするのでしょうか。ここに、「追加料金トラブル」が発生する必然的なメカニズムがあります。
① 基本プランを極限まで削る
ブローカーが指定する下請け向けの基本プランは、本当に「骨組みだけ」です。ドライアイスは1日分、搬送距離は10kmまで、棺は最も安価な布張りのもの……といった具合です。しかし、実際の葬儀で「火葬場の空き待ちで3日安置が必要」「病院から安置所への距離が20kmあった」という事態は日常茶飯事です。これらはすべて「基本プランの範囲外」となり、現場で追加料金として計上されます。
② 現場での「アップセル(ランクアップ)」への依存
手数料を引かれた後の売上では、人件費や式場の電気代すら賄えないことがあります。そのため、現場を担当する葬儀社のスタッフは、遺族に対して「このお棺では少し寂しいですよ」「皆様にお配りするお返しものは、こちらの方が恥ずかしくありません」と、オプションの追加や物品のランクアップを勧めざるを得なくなります。
経営者に「この案件で〇万円以上の追加オプションを取ってこい」と厳しいノルマを課されている現場社員も少なくありません。結果として、悲しみの中にいる遺族に対し、組織風土そのものが「売上至上主義」「自分主義」に染まった強引な営業が行われることになるのです。
4. 誰の顔もみえない「無責任の連鎖」
この構造の恐ろしい点は、トラブルが起きた際に「誰も責任を取ろうとしない」構造ができあがっていることです。
高額な追加料金に納得がいかない遺族が、ネット仲介ブローカーにクレームを入れると、彼らはこう言います。「私たちはプラットフォーム(紹介窓口)ですので、現地の契約内容については分かりかねます。現地の葬儀社と話し合ってください」。 一方で、現地の地元葬儀社に抗議をすると、「私たちはブローカーが定めたルールと、お客様が現地で同意されたオプションに基づいて施行しただけです」と返されてしまいます。
ネット上に並ぶ、あの優しげで安心感を抱かせる家族のイラストや「寄り添う」という言葉とは裏腹に、その本質は冷徹な「数字至上主義」のITビジネス。これが、現在のネット格安葬儀仲介が抱える最大の闇です。
まとめ:だからこそ「顔の見えるプレイス」を選ぶべき
ネット仲介ブローカーが提供するサービスがすべて悪だとは言いません。一切のこだわりがなく、本当の意味で事務的な処理としての火葬だけを求めるのであれば、機能するケースもあります。
しかし、「大切な家族を、最後はまごころを込めて見送りたい」と願うのであれば、こうした歪んだ下請け構造から生まれる「数字の押し付け」に巻き込まれてはいけません。
私たちが葬儀社を選ぶ際は、ネット上の華やかなガワ(外見)に騙されず、
地域の経済団体(商工会議所など)にしっかりと籍を置いているか
自社の看板と自社のスタッフで、最初から最後まで責任を持って対応してくれるか
という、「地域に根を張り、逃げ隠れできない信頼を守っているか」を基準にすることが、最大の防衛策になります。安さという数字だけを追い求める経営思想から距離を置き、顔の見える地元の優良な企業に直接相談すること。それこそが、歪んだ構造に搾取されないための賢い終活の第一歩です。
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