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葬儀会社を選ぶ際、私たちはどうしても「価格」や「プランの内容」といった、目に見える数字や分かりやすい条件ばかりに目を奪われがちです。しかし、これまでの記事で触れてきた通り、ネット上の「格安」という数字の裏側には、強引なオプション追加や事後の高額請求といった、組織風土に起因するリスクが潜んでいることが少なくありません。
では、目の前にある葬儀会社が「数字至上主義の不誠実な企業」なのか、それとも「遺族に寄り添う誠実な企業」なのかを、私たちはどうやって見極めればよいのでしょうか。
その答えは、その企業の経営者が「地元の商工会議所や、県知事認可の葬祭業協同組合などの地域コミュニティに籍を置いているか」という点にあります。一見すると葬儀のクオリティとは無関係に思えるこれらの「所属」こそが、実は企業が不誠実なビジネスに走るのを防ぐ、最も強力な「社会的ブレーキ」として機能しているのです。今回はそのメカニズムを詳しく解説します。
1. なぜ「地元への所属」がブレーキになるのか?
インターネットを中心に暗躍する都市型の葬儀仲介ブローカーや、数字のみを追い求める新興の格安専門会社には、共通する決定的な特徴があります。それは「地域社会における顔が見えない」ということです。
彼らの多くは東京などの大都市に本社を置き、地方の現場での実体を持っていません。極端な話をすれば、ある地域で強引な営業を行って悪評が立ったとしても、ネット上の広告を少し修正したり、最悪の場合はブランド名(屋号)を変えてしまえば、何食わぬ顔でビジネスを続けることができます。つまり、「悪評を恐れる必要がない」ため、ブレーキを踏むことなく売上拡大のアクセルだけを全力で踏み込める環境にいるのです。
一方で、地元の商工会議所やロータリークラブ、法人会、あるいは「山口県葬祭業協同組合」のような公的認可を受けた地元の業界組合に加盟している経営者は、全く異なる環境に身を置いています。
彼らは、地域の他の経営者や住民と日常的に顔を合わせ、経済活動だけでなく、地域の祭りやボランティア、寄付活動などを通じて「顔の見える関係」を築いています。もし、そのような立場の経営者が、悲しみの中にある地元の遺族に対して「ぼったくり」のような不誠実な真似をしたらどうなるでしょうか。
「あそこの葬儀社は、格安と謳っておきながらお葬式の当日になって何十万円もふっかけてきた」 「悲しんでいる遺族の弱みにつけ込んで、強引に高い祭壇を売りつけてきた」
こうした悪評は、狭い地域コミュニティの中では一瞬にして駆け巡ります。商工会議所の集まりに行けば周囲の経営者から冷ややかな目で見られ、地域での信用は完全に失墜し、長年守ってきた暖簾(のれん)に泥を塗ることになります。経営者自身の社会的地位やプライドだけでなく、巡り巡って自社の「本業の存続」そのものが危うくなるのです。
つまり、「地域から逃げ隠れできない環境に自らを置いていること」自体が、「決して不誠実な商売はできない」という強力な抑止力(ブレーキ)として機能しているのです。
2. 協同組合加盟社が遵守する「業界のルールと監視」
特に、経済産業大臣認可の全国組織(全葬連)の傘下にある、山口県知事認可の「山口県葬祭業協同組合」などの正規の組合に加盟している企業の場合、このブレーキはさらに二重、三重の強固なものになります。
こうした組合に加盟する企業は、単に仲良しグループを作っているわけではありません。消費者トラブルを防ぎ、業界の信頼性を保つために定められた「葬祭サービスガイドライン」を遵守することを義務付けられています。
このガイドラインには、
事前の明確な見積書の提示(口頭での曖昧な金額提示の禁止)
追加料金が発生する場合の条件と金額の事前説明
遺族の意思を尊重したプラン選定の徹底
などが厳格に定められています。万が一、加盟社がこれに違反して消費者と大きなトラブルを起こせば、組合内でのペナルティや除名処分、ひいては行政からの指導対象にもなり得ます。横のつながりがあるからこそ、お互いが「おかしな商売をして業界全体の信頼を落とさないか」を監視し合う自浄作用が働いているのです。
3. 未加盟の地元企業すべてが悪ではないが、「所属」は一目で分かる安全弁
ここで誤解してはならないのは、「組合や商工会議所に加盟していない地元の葬儀社は、すべて悪質なのか」というと、決してそうではないという点です。前回の記事でも触れた通り、あえてどこにも属さずに、組合費などのコストを削って地域に還元している誠実な個人経営の葬儀社も存在します。
しかし、私たち消費者が「いざ」という緊急時に、その企業の本質を短時間で見抜くのは極めて困難です。特に、事前の知識がない状態では、どの言葉が誠実で、どの言葉がセールストークなのかの区別がつきません。
だからこそ、企業のウェブサイトの会社概要やパンフレットの隅にある「〇〇商工会議所会員」「〇〇県葬祭業協同組合加盟」という記載は、消費者が騙されないための「客観的な安全弁(フィルター)」として非常に役に立つのです。その記載があるというだけで、少なくとも「数字の拡大だけを目的として、地域を食い荒らして逃げるような都市型ブローカーではない」という証明になります。
まとめ:セルフプロデュースの第一歩は「相手の土俵」を知ることから
葬儀を自分らしく、そして家族に負担をかけない形にセルフプロデュースするためには、まずはパートナーとなる葬儀会社が「安心できる土俵」に立っているかを確認することが最優先事項です。
大量のネット広告で「安い、安心」といくら文字で並べられていても、その企業に「地域社会からのブレーキ」がかかっていなければ、その言葉の信頼性は砂上の楼閣に過ぎません。
地元の経済団体や組合にしっかりと籍を置き、地域と共に生きている葬儀会社であれば、あなたの「自分らしい見送りをしたい」「費用はこれくらいに抑えたい」という要望に対して、自社の評判とプライドをかけて誠実に応えてくれるはずです。安さという表面的な数字の誘惑を振り払い、相手が「どこに根を張って商売をしているか」を見極める広い視野を持ちましょう。
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